デビューEPと続くシングル「天使ちゃんだよ」で見せたポップなセンスによって注目を集め、今年のフジロック・フェスティバル 〈ROOKIE A GO-GO〉 ステージで出演を果たしたTrooper Salute。7月に発表された「不治」では、これまでの作風とは一線を画すオルタナティブな側面を見せ、その多面的な表現への期待をさらに高めている。
今回overtoneでは、名古屋出身のインディーズシーンのファンとしての視点から、街やシーン、影響を受けたアーティスト、音楽やステージに対する姿勢について話を聞いた。本稿が、彼らの音楽により深く惹き込まれるきっかけとなり、さらには新たな世界を見つける第一歩となればうれしい。
日付: 2025年 10月 2日
形式: 書面インタビュー(日本語)
進行: Lee Hansu
お忙しい中インタビューにご協力いただきありがとうございます。いつも応援しております。
貴重な機会をいただき、本当にありがとうございます。
まずはバンドのご紹介をお願いします。
Trooper Saluteと申します。2022年に大学の軽音楽部で結成し、2024年1月から本格的にライブ活動をスタートさせました。同年12月には1st EP「Trooper Salute」をリリース。
2025年は「森、道、市場2025」「FUJI ROCK FESTIVAL ’25 ROOKIE A GO-GO」「SPACE SHOWER SWEET LOVE SHOWER 2025」など、国内のロックフェスにも出演させていただきました。
「Trooper Salute」というバンド名の由来をお聞かせください。
小宮(Key.): Jay Bocook作曲の同名曲から取っています。マーチングバンドの曲です。
高校時代吹奏楽部でマーチングを経験したのですが、その流れで知った曲で、凄くカッコよくてタイトルの字面もお気に入りで、当時から「自分がもしバンドを組んだら絶対この名前にしよう!」と決めていました。
同じく、ロン三元さんのお名前の由来についても伺いたいです。
ロン三元(Ba.): 大学の伝統で入学時に先輩からあだ名を授かるのですが、「麻雀が好きです」と伝えたら、麻雀要素+語感で「ロン三元」と名付けられました。完全にその先輩のセンスです。
アルバムやグッズのイラストはムサシさんが描かれていると伺いました。バンドロゴやポスターのデザインなども担当されているのでしょうか?イラストもデザインも毎回とても可愛いと思っています。
ムサシ(Vo.): ジャケットやグッズのイラストは自分で描いているのですが、ロゴやポスターデザインは苦手なので、友人に頼むことが多いです。
名古屋/愛知県といえば日本三大都市の一つと言われるほどの大都市ですが、韓国では東京や大阪に比べると馴染みが薄い場所です。トヨタやIVEのレイさんくらいなら思い浮かぶかもしれません。Trooper Saluteは名古屋出身であることを掲げているバンドだと思い、軽く質問させていただきます。名古屋とはどんなところですか。
小宮: 車をたくさん作っているくせに、みんな車の運転が荒いです。路駐が多くて左車線を走れませんね。
音楽では、東京と同じくらい多様性が受け入れられているイメージがあります。ライブハウスごとに(ジャンル、雰囲気の)棲み分けがしっかりしていますね。
個人的には今年4月に名古屋のZeppとCLUB QUATTROでライブを観ました。こうした大きな会場なら馴染みがありますが、小規模なライブハウスはなかなか見つけにくかったです。名古屋のライブハウスで実際に出演された場所やおすすめしたい場所があれば教えてください。
小宮: よく活動しているのは、まずstiffslack。レコードショップにライブハウスが併設されており、オルタナ、ポストロック、ハードコア、エレクトロニカを生業とするバンドが多数出演しています。特に最近は東海の若手バンドの育成に力を入れている印象です。
次にKDハポン。高架下にあるライブスペースで、キャパは80名程度と小規模ながら、県外からも有名なバンドがライブしに来ることもあり、名古屋の音楽好きが集結する箱です。飲食のメニューも豊富でカレーやガパオライスがとても美味しいです。ぜひ訪れて欲しいです。
CLUB QUATTROの公演前に、下のフロアにあるTOWER RECORDSに立ち寄ったところ、Trooper SaluteのCDが目立つように陳列されていました。ちょうど1枚だけ残っていたので、慌てて購入してしまいました。(笑)大手ショップでも注目されていると感じましたし、先日はフジロックにも出演されましたよね。最近は韓国でも時々Trooper Saluteの名前を見かけます。人気の高まりを実感されていますか。
小宮: 少しずつ実感しています。活動したての昨年度と比べると、ライブに来てくれるお客さんやサブスクのリスナーがとても増えたので。。。たまにInstagramやXのDMで海外のリスナーから応援メッセージが届くようになって、全てに返信できておらず申し訳ないのですが、大変励みになります。あと最近はコピーバンドをしてくださる学生の方々が増えまして、自分たちも普段はコピバンしているのでとっても嬉しいです。
J-POP好きなら、愛知出身のバンドとしてSPYAIR、04 Limited Sazabys、スキマスイッチ、緑黄色社会といった名前を知っている方も多いと思います。ただ、これから人気を得ていくバンドを知るのはなかなか難しいですよね。9月28日に開催されるTHE WORLD IS YOURS 2025に出演するバンド「溶けない名前」も名古屋出身と伺いましたし、Trooper Salute企画ENCOUNT Vol.1で共演する「えんぷてい」も名古屋出身ですね。ENCOUNTを通じても知っていけると思いますが、今のうちに教えていただける名古屋のバンドがあればご紹介ください。
小宮: 今度自主企画名古屋編で共演する「QOOPIE」や「鈴木実貴子ズ」、あと個人的に「EASTOKLAB」はもはや名古屋だけじゃなく全国的にも各々のシーンの礎を担っているバンドだと思っていて、音楽好きなら必聴です。
そして、「木魚人」「ワタクシ」「浮気なヴァカ」は今後絶対どこかで見つかるので、今のうちに注目しておいて欲しいです。
ENCOUNTが名古屋と東京の二都市で展開されることや、東京での活動が増えていることも印象的です。8月にはRAYの内山さん主催tie in reaction vol.11でRAY、TØGARÜと共演されましたが、本当に行きたかったです。(笑)こうした活動のおかげで地域性にとどまらず、Khakiやcephalo、揺れるは幽霊など同時代のバンドとシーンを形成している印象があります。この過程で他の方々からアイデアを得たり学んだりすることはありますか。
小宮: たくさんあります。僕自身が昨今のインディーズシーンのファンで、切磋琢磨するライバルだという意識は結構低くて。とても俯瞰して見ています。
アイデアは万人に開かれるべきで、個人の思うように改良したりアレンジしたりしていくべきだと思っているので、かっこいい手法はタイムリーに取り入れますし、オマージュすることもしばしばあります。(ただしパクリと言われないように細心の注意は払っています)
逆にトルーパーを意識して歌詞を書いたりサウンドメイクしたよという声もたまに聞くのですが、凄く嬉しいですね。
大学で結成されたバンドとのことですが、皆さんはすでに卒業されましたか?そうでない場合、各地へライブに行くのは大変ではありませんか。
小宮: ロンさん以外は全員大学生4年生です。毎日授業がある訳ではないので、むしろ学生の方が遠征しやすい環境にありますね。

1st EP『Trooper Salute』について伺いたいと思います。セルフタイトルにされた理由を教えてください。
小宮: 最初は別のタイトルにしようと意見を出し合っていたのですが、非常に揉めたので仲裁案としてセルフタイトルになってしまいました。
楽曲制作は小宮さんが基礎を作り、他のメンバーがアレンジを加えて完成させていると伺いました。小宮さんが公開されたSpotifyプレイリスト「1stEP リファレンス」を拝見して感じたのは、サウンド面ではジャズの影響が強く、歌詞では相対性理論の影響が大きいという点でした。もちろんこの二つだけでは語り尽くせませんが。これは小宮さんの個人的な好みでしょうか?それともバンド全体の好みなのでしょうか。
小宮: 完全に僕の好みです。ジャズそのものではなく、ジャズやクラシックに影響を受けたアーティストのサウンドが好きです。アレンジが一辺倒じゃないし、最近はそこにシンセサイザーなどを使って簡単に変な音を入れられるじゃないですか。ごちゃっとしているけどカラフル過ぎない感じが好きですね。歌詞は相対性理論も大好きですが、日本語ラップからも少しは影響を受けています。韻を踏むためだけに登場するリリックとか大好きですね。理路整然としていないけど、声に出すと気持ち良いし、繰り返し聞いていると、なんだか深い意味があるように思えてくる。ICE BAHNの歌詞と睨めっこした時期もありました。
ボーカルのムサシさん、ベースのロン三元さん、ドラムの梅村さん、ギターの岩井さんは、曲を完成させる際に「こういう要素を入れたい」、「ここを意識している」といった点はありますか。
ムサシ: 聴いていて不快感を与える声にならないよう気をつけています。
ロン三元: 耳に残るベースラインとか、気持ちの乗るベースラインになるように意識してます。それと最近はどうやってコード感を出すかをよく考えてます。
梅村(Dr.): 歌やギター、キーボードのメロディとユニゾンするフレーズを作るのを意識してます。かっこいいよね。
岩井(Gt.): バッキングで支える役割が多いですが、所々歌えるようなフレーズをねじ込みたいなと思って弾いてます。
1曲目は「冷たいマーメイド」です。「キセル乗車で海岸に浮かぶ」という歌詞がとても気に入りました。最初はニュアンスが掴めなかったのですが、波に乗って上陸する姿を思い浮かべてからは、こんなに巧みに表現できるのかと感心しました。このアイデアはどのようにして生まれたのですか。
小宮: 「冷たいマーメイド」という言葉を思いついたとき、真っ先に浮かんだのは、女の子が海上列車に乗っている情景でした。日本のアニメや漫画には、海と列車を組み合わせたシーンが多く描かれていると思います。『ONE PIECE』や『千と千尋の神隠し』など、そのあたりの影響を無意識に受けているのかもしれません。
この曲が5分22秒もあることに今気づきました。最近のポップ市場ではTikTokのようなメディアに合わせて曲が2分台と短く、構成もシンプルになる傾向がありますが、ボーナストラック「十纏」を除けばすべて3分30秒以上ですね。より広い市場を意識して曲の長さを調整するお考えはありますか。
小宮: ありません。伝えたいことや描きたいことを削いでまで曲を短くすると、いずれ自分の作品に対して愛着が持てなくなると思うんです。勿論詰め込んだ結果短くなることはあり得ますが、必要だと思う展開はしっかり残していきたいと思います。
「魔法少女」はムサシさんのファルセット、上行と下行を繰り返すメロディ、2分50秒頃のボーカルから楽器への強い没入感のある展開、最後を「あゝ」で締める構成まで、どこも凄いと感じました。語り手の混乱が深まっていくストーリーも魅力的で、ガリレオやデカルトのような人物を登場させる表現も面白いです。制作にあたって皆さんはどのような点に重点を置かれましたか。
小宮: びっくりさせようと思って編曲しました。
ムサシ: 機械っぽさと生っぽさを両立させたいなと思って歌いました。
ロン三元: ラスサビ前の間奏では半音の移動を多く使ったり、ルートごとに同じ運指に見せかけてちょっとずつずらすような不安定感を意識しました。音でかいところはかっこいいベースラインになるようにしました。
梅村: 金物の音色、スネアの乾ききった音にこだわりました。かなり。
岩井: コーラスめっちゃかけて不思議な感じ?魔法っぽい感じ?にしました。音源の爆音パートはそういうのが得意な先輩が弾いてます。
YouTubeチャンネルに「魔法少女」のライブ映像があります。最初に紫色のサムネイルで酔いしれているムサシさんを見て再生したのですが、直線的で力強く演奏するメンバーと、音を外しながらも満面の笑みを浮かべる姿を見て、このバンドは良い意味で凄いと直感しました。音源とはかなり違うライブパフォーマンスですが、どのように準備されたのでしょうか?また、毎回ライブごとにアレンジは変わるのでしょうか。
小宮: 魔法少女は、割と最近まで音源通りに演奏していたんです。でもギターの譜面がかなり無茶苦茶で、EPのレコ発ライブに向けて「音源通りのクオリティを出すのは厳しい」と感じてしまって。そこで直前になって、何を弾いてもそれっぽく聴こえるようなライブ用のアレンジに切り替えました。僕が鍵盤で頑張るから、みんなはミニマルに、フィーリング重視で!みたいな感じで。結果的にそれがすごくハマって、今はそのアレンジで固定しています。毎回変えている曲は少なくて、強いて言えば「思考回路」くらいですね。あの曲だけは、ライブごとに構成を変えられるよう試しています。
「幽体離脱」では歌詞カードに二重括弧で幽体離脱状態を表現されています。特に「((…))」や「((!!!))」といった部分が、どのように音で表現されているかを確認する楽しさがありました。アイデアの発端はどこから来たのでしょうか。
小宮: 敬愛する長谷川白紙さんが曲名を絵文字にしたり*、歌詞をギャル文字っぽくしたり**するのにインスピレーションを受けています。他にも、ブレイクに文字を置くのは、何となくシャフト(物語シリーズなど)のアニメっぽくて個人的に気に入っています。
* 長谷川白紙「o(__*)」** 長谷川白紙「悪魔」
シャフト
「美人」では楽器が特に印象的です。ムサシさんの笛で本格的に曲が始まり、途中でビブラスラップで効果音を入れる場面もあります。各楽器を使うようになった経緯をお聞かせください。
小宮: 「美人」のリフは最初シンセサイザーで弾いていたのですが、あんまりしっくりこなくて、ムサシが幼少期に篠笛を習っていたとのことで試しに吹かせてみたらいい感じなり、そのまま採用しました。ビブラスラップは、部活で「猫戦」のコピーをしたときに部で購入したのですが、それ以降誰も使っていないのが可哀想になったので無理やり入れてみました。
歌詞の冒頭は「揺れたあの娘」、次は「幽霊だあの娘」と始まります。韻を踏むためだと思いますが、もしかしてバンド「揺れるは幽霊」と何か関係があるのでしょうか?
小宮: 偶然です。「美人」は2023年の秋ごろにできていたので、、
「幽体離脱」と「美人」もライブ映像になっています。君島大空さんもそうですが、よく二曲をまとめて一つの映像にされますよね。理由は何でしょうか?途中にメンバー紹介があるからでしょうか?
小宮: 深い理由はないんですけど、ライブではよく続けて演奏する2曲なので、曲間もそのまま残した、という感じです。
「美人」の制作にはbetcover!!の「狐」を参考にされたと伺いました。小宮さんがbetcover!!の柳瀬二郎さんを好きだと発言されたこともあり、この曲や「幽体離脱」のライブ映像を観るとフルートやラストの「ダッダッダダダ」の部分など影響を受けている印象がありました。別件ですが、曲の中で一度止まる構成も特徴的です。例えば「幽体離脱」の「君のこと」で止まるように、両曲とも一度緊張を作って解く場面があります。君島大空さんの「除」やbetcover!!の「バーチャルセックス」、最近ではサブカルチャーシーンの「サンフェーデッド」のような曲も、こうした瞬間的な緊張を与える手法が見られます。即興ジャズから来ているのかなと漠然と考えていますが、最近の日本の音楽シーンでよく見かけます。どのように取り入れられるようになったのでしょうか。
小宮: あんまり意識してなかったですね。ただ編曲をする際、休みなくひっきりなしに音楽が続くと聴き手側が疲れるだろうと思い、曲中所々にポイントを置くようにはしています。
続いて「浮世離れ」です。歌詞に知らない表現があり、まずお聞きしたいのですが、「瀬露伴」とは何でしょうか?「セロハン」の音写でしょうか?
小宮: はい、セロハンテープのことです。昔セロハンの漢字を調べた時に”瀬露伴”と書いてあるサイトがあった気がするのですが、今検索してもヒットしなかったので覚え違いだったのでしょうか。。。実家のリビングに木彫りのセロハンテープのケースがあり、それをイメージして歌詞に入れたのを覚えています。
歌詞にはハリー・カーネイが登場します。お好きなアーティストでしょうか。もしそうでしたら、以前「男子高校生の妄想」とアルバムを紹介されたのも自伝的な要素なのでしょうか。
小宮: むしろ僕自身はジャズにあまり馴染みがなくて。野口文さんが“botto Ⅹ”のリリックで触れていましたが、ジャズをよく知らない人ほど「ジャジーだね」と言ったりするじゃないですか。僕も近所の喫茶店でたまたま流れていたジャズをShazamして、それで分かった気になるようなタイプだったので。そんな「浅い知識でジャズを聴いている男子高校生」が、偶然知っていたカーネイの名前を想起する──そんな情景を歌詞に取り入れています。ある意味、それも男子高校生特有の青さなのかなと思います。それこそ「浮世離れ」はよくジャズ風味と評されますが、僕からすると”偽”ジャズです。
CDのボーナストラック「十纏」も素敵です。かなりジャズ寄りの曲ですが、ミニマルでありながら必要な要素はすべて揃っていて、アルバムをきれいに締めくくっていると感じます。5曲目と同じ時期に作曲されたのかなと思いましたが、いかがですか。
小宮: ズバリ当てられてますね!「十纏」も「浮世離れ」も、バンドを結成するより前の、大学入りたての春頃に、ピアノの弾き語りで作った曲なんです。なので和音の進行と歌がメインで、バンドアレンジの段階でもフレーズはほとんど追加していません。

「天使ちゃんだよ」は今年5月にリリースされました。歌詞の「得意科目」や曲のテーマなど、EPの延長線上にあるように感じました。どのような経緯で発表された曲なのでしょうか。
小宮: 我々にはEPのようなポップな曲と、ライブではよくやっているけどいまだに音源化していないオルタナティブ寄りの曲があります。今年、本当は後者の方向性で長編のアルバムを作ろうと思っていたのですが、その橋渡しになるような作品(EP単位で)が必要だよね〜となり、その一環で制作しました。
この曲はかなり口コミで広まったように思います。韓国ではTrooper Saluteといえば必ずこの曲のMVのリンクが出ます。日本でも同じような感じなのでしょうか?Spotifyのおすすめによる影響もあるのでしょうか。
小宮: おすすめの影響かは分かりませんが、確かにこの曲を出して以降、ライブに来てくれる方はたくさん増えました。新規のファン獲得を明確に狙っていた曲ではあったので(とにかくバズれ!と思っていました)、自分の中では一つ目標を達成できたと思っています。このインタビューを通して韓国の状況が知れて嬉しいです!
EPはセルフタイトルであり、バンドを初めて知る入口だったせいか、ボーカルやキーボード、笛の華やかさに圧倒された印象があります。一方「天使ちゃんだよ」にはそうした要素もありつつ、ギターやベース、ドラムといったバンドの基本要素がしっかり入っている印象を受けました。より親しみやすいサウンドだから人気が出たのかもしれません。実際に「よりバンドサウンドを意識する」という目標があったのでしょうか。
小宮: EPは楽器のフレーズなどを自分が指示していた箇所も多かったのですが、「天使ちゃんだよ」以降は各個人で何を弾くか考えたり、キメのアイデアを持ち寄ったりしたので、必然的にバンドサウンドへの意識は高まっていたと思います。あとはシンプルに演奏が上手くなったってのが大きいですね。

「不治」はTrooper Salute結成のきっかけとなった曲だと伺いました。その経緯を教えてください。
小宮: 正しくは結成ではなくて、ライブ活動スタートのきかっけです。Trooper Saluteは2022年に大学の軽音楽部で結成し、約1年半は部内での活動に専念していました。
転機となったのは、stiffslackで行われた部内ライブ。そこで「不治」を披露した際、PA*のタピさんに大変評価していただき、「ぜひ外に出てみないか」とお声がけいただいたのです。(ちなみにこの時「美人」も演奏しました)
当時、所属していた軽音楽部には外部で活動する文化がほとんどなく、初期はアウェーな状況も多かったのですが、タピさんが継続的にサポートしてくださったおかげで、無事に本格的なバンド活動を続けることができています。
* Public Address, ここでは音響エンジニア
8分を超える長尺曲なので、最初はポストロックかと思いました。ゆったりしたテンポで進む憂鬱な曲で、それまでの作品とかなり雰囲気が違います。しかし最初に作られた曲だと聞き、なぜこのような曲から始まったのか、そしてその後どのようにして明るい曲が多く作られるようになったのかを伺いたいです。
小宮: 「不治」以降に「冷たいマーメイド」や「幽体離脱」ができた訳ですが、これは「美人」を先にシングルカットしてしまい、「美人」を含んだEPを作る際に、ある程度世界観が同じものを出さなきゃいけなくなって、必然的に作りました。
EPのようにポップな曲は、大学に入るまでの自分の趣味という感じで、音源化してないものや「不治」みたいな暗い曲は大学に入って、軽音楽部の先輩たちに勧められてハマった趣味という感じです。
明るい曲をリリースした後に急に暗い曲を出すことに、不安はありませんでしたか。
小宮: めっちゃ不安でした。でも面白がってもらえるかな?という期待の方がちょっと強かったですね。「不治」で知ってくださった方も多かったように思います。
MVも独特ですね。スタジオでの一発録りを映像にしたと伺いました。MVと音源、どちらを一発録りされたのでしょうか?感情がより直接伝わる良い方法だと思いました。
小宮: MVを一発録りしました。音源は最も古いアレンジに近くて、MVは最近ライブでやっているアレンジになっています。
「不治」が最初に作られた曲だと聞き、もう作った曲はすべて発表されたのかと思いましたが、未発表曲も多いのですね。「つつぬけ」、「ホーリーナイト」、「正体」などはライブで披露されていたと伺いました。リリースの予定はいつ頃になりそうでしょうか。
小宮: 正しく整理すると、魔法少女→浮世離れ→H.E.L.L.O.→友達がいました→美人→不治の順番に(バンドで)制作しています。(本当は魔法少女の前に3曲ぐらいあるのですが、これらは2度とライブで演奏しないと思います)
持ち曲は諸々合わせて20曲ぐらいあるのですが、ゆっくりリリースしているのでライブでは半分くらい未音源化の曲になりがちですね。今年に2nd EPをリリースして、残りの曲も2026年~2027年には発表できればと思っています。
今年5月には愛知県で開催される音楽フェス「森、道、市場」にも出演されました。個人的にぜひ行ってみたいフェスで、数百ものお店が集まるコンセプトやテントステージ、海辺でのライブがとても魅力的だと思います。2018年に吉澤嘉代子さんが「残ってる」を歌った映像が大好きで、その曲自体も好きですが、雨の中で誰かの初恋のように歌う姿が最高でした。Trooper Saluteが同じフェスで歌う映像を見て、その姿が重なりました。愛知で開催されるフェスということでより似合っているようにも感じました。実際のライブはいかがでしたか?
小宮: 客として参加していたフェスだったので、出演が決まった時からステージの終わりまで半年間夢見心地でした。
ムサシ: 2024年にトリオ編成で出演された吉澤嘉代子さんのステージを生で見たのですが、全く同じ時間帯の同じステージにお呼ばれし、「憧れの舞台にでれた!」という喜びが強かったです。
ロン三元さんのVlogも拝見しましたが、キーボードが壊れてプロレス技をかける姿や、本番直前にトリコのOPを一緒に歌う様子しかなく、余計に気になりました。(笑)普段からライブ前はああいった雰囲気なのでしょうか。
小宮: フェスなどの大きい舞台ではなんとなく流れで円陣を組むのですが、熱血っぽくなるのは嫌なので、おふざけでアニソンを歌ったりします。
フジロックについても伺いたいです。ROOKIE A GO-GOのステージとはいえ、とても大きなフェスです。出演された感想を教えてください。
小宮: 楽しかったです。苗場は異世界でした。ヘッドライナーのFred again..やSuchmosが裏被りになったのでもうおしまいかと思いましたが、たくさんのフジロッカーが観に来て下さって、「ああ俺たちはなんて幸せ者なんだろう」と感動しました。
すでに大きなステージに立たれましたが、今後出演してみたいステージはありますか?目標をお聞かせください。
小宮: これまで出演したフェスの、もっと大きいステージへカムバックしたいです。いつか叶えたい一番の目標は、名だたる先人たちが歴史を残してきた、日比谷野外音楽堂でワンマンライブをすることです。
長時間にわたりインタビューにご協力いただきありがとうございました。最後に一言お願いします。
いつか韓国でライブしたいです!もうしばしお待ちください!